つい先日、ガソリンのVOC対策に起因すると思われるレースリタイヤを喫しました(泣
具体的には走行中にハイオクが沸騰したせいで燃料タンク内圧が上がりキャブレターがオーバーフロー、空燃比がデタラメになったせいでエンスト多発しました。 5月としては気温が高くバイク速度の割に発熱の多いコースだったのもありますが、数多のレース経験の中でも初めての経験でした。
パドックで知り合いと「北陸のガソリンが駄目だった」とか「冬用ガソリンだったかな?」なんて冗談言いあっていたんですが、帰ってから調べて見るとそれっぽい情報が出てきてびっくりです。
季節によって異なるガソリンの蒸気圧
石油を基に有機溶剤のミックスジュースである自動車用ガソリンのスペックでは沸点が40~220℃と示されていてずいぶんと幅があるものです。 確かに50℃程度の沸点だとすると沸騰するのも無理ないレース条件でした。
しかし、これまでもっと厳しいと思われるレース条件でもガソリンの沸騰が原因と思われるトラブルに遭遇したことのなかったことに疑問を持ちました。
使用したハイオクは一ヶ月ほど前に出光のスタンドで購入して密封できる携行缶に保存していたもので、ここに疑義はありません。 あるとしたらいまではよく知られる軽油の凝固点管理同様、ガソリンの季節管理がある可能性です。 自動車用ガソリンのルーズな沸点スペックも気になりますし、まずは「ガソリン 沸点管理」で検索してみました。
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自動車ガソリンおよび 石油業界におけるVOC対策について
https://www.pref.kanagawa.jp
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2014/01/29 — 管理方法. 5月1日から9月30日に製油所から出荷する自動車ガソリンの蒸気圧を65kPa以. 下としている。 ○ 設備対応. ① ガソリンブレンド基材から ...
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というのが目に付きました、季節別にガソリン蒸気圧を管理しているようです。 手持ちのハイオクの購入時期は5月前半で夏用に切り替わる前の製品のはずなので、ガソリン沸騰の原因の1つとしてこの線が濃厚です。
資料からは寒候期上限93kPa、夏季上限65kPaとのこと[i] 少なくとも季節によって20kPaは異なるようです。
混合物であるガソリンの蒸気圧測定方法についてはJIS K2258 リード法によるもので 華氏100度(摂氏37.8度)に於ける値です。
ガソリンの蒸気圧が高いと揮発分が大気中に逃げ光化学スモッグの原因になるので、夏季は低めにして揮発分の蒸発を少なめに管理し、寒候期は混合気を作りやすくするために蒸気圧を高めにコントロールするとのこと。
2006年改正大気汚染法のVOC排出規制施行に合わせて石油業界は貯蔵施設や出荷施設および給油施設においても対策を進めることで、10年掛けてVOC排出3割減したそうです。
[ii]
その他、印刷や塗装に伴うVOC排出も対策して全体で44%削減したとのこと。
(が、光化学オキシダントは増え続けたしPM2.5も目標未達成… 効果がなかったもよう)
ガソリンの蒸気圧コントロール
具体的にガソリンの蒸気圧をコントロールをするには、沸点の低いブタン類をを削減することで得られるようです。
これはデブタナイザーという装置でブタン類除去し改質装置などで不足分を補うなどして成分をコントロールしています。
具体性な成分の変化は
[iii]
(上位十番目まで抜粋)
おもにブタン類の比率が夏冬で大きく異なっていて、蒸気圧へ支配的な影響を与えているように見えます。
それもレギュラーガソリンよりプレミアムガソリンのほうが差が大きいような?
プレミアムガソリンの組成をみると、冬はオクタン価も蒸気圧も高めのブタン類を多めに、夏は蒸気圧の高いブタンは諦めてイソペンタンに。 そしてトルエンあたりでオクタン価の微調整をしているのではないかと想像しました。
上記から考えるにレギュラーガソリンに比べプレミアムガソリンのほうが夏冬の沸点の差が大きいことが想定されますね。
ここから得られた教訓は「季節替わりはプレミアムガソリンに気をつけろ」です。
リタイヤはほんとに悔しかった…
[i] 平成26年1月29(水)「『ガソリンベーパー』を考えるシンポジウム」配布資料 「日動車ガソリンおよび 石油業界におけるVOC対策について」
[ii] https://www.env.go.jp/air/osen/voc/index.html
環境省ホーム> 政策分野・行政活動> 政策分野一覧> 大気環境・自動車対策> 大気汚染対策 揮発性有機化合物対策> 審議会答申等
[iii] 出典:「ガソリン給油ロスによるVOC の排出について」東京都環境科学研究所、大気環境学会誌、第 47 巻